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関節リウマチ

部位:全身疾患   

当院は関節リウマチの診断、治療に力を入れています。

「朝どうも手がこわばる」「体のあちこちの関節が痛い」などの症状が続く場合、それはリウマチかもしれません。リウマチは放置すると手足ばかりでなく、脊椎、肺、心臓などの疾患を引き起こしたり骨粗鬆症の原因になったりします。

診断は、血液検査、超音波診断装置、MRI、レントゲン、などにより関節炎の有無を確認することで行います。

しかし、逆に関節の痛みがあり、リウマチ反応が出たというだけで即リウマチです。というわけではありません。リウマチ反応が強くてもリウマチでない場合はいくらでもあるのです。

リウマチの治療には、副作用の危険が伴いますからリウマチでないのにリウマチの薬を飲み続けるのは良いことではありません。

リウマチかどうかを早期に正しく診断し、治療の必要性を決定することが大変重要であるといえます。

リウマチの早期診断

リウマチを早期に診断するのは実は簡単ではありません。

指がこわばったり、関節が痛くなったりする疾患は多数ありますし、リウマチ反応が陽性になる疾患もリウマチばかりではないからです。

健康診断でリウマチ反応(RF)が高いといわれたと言って当院を受診する70歳以上の方の多くはリウマチではありません。健康な方でも、リウマチ反応は年齢とともに増えてくるからです。

加齢とともに関節がこわばったり、痛くなることはありますから、「こわばり」と「痛み」と「リウマチ反応」だけでリウマチの診断をうけ抗リウマチ剤の投与がなされるとしたら、それは正しいことではありません。

では、どのように診断したら良いのでしょうか。

リウマチの診断基準については後述しますが、当院では患者さんの症状のほか、超音波診断装置(パワードプラーエコー)、MRIを活用しています。

パワードプラーエコーやMRIはリウマチの滑膜炎の早期発見に非常に有用です。

リウマチのMRIでの診断には造影剤が必要ですので気軽に出来る検査ではありませんが、この検査で滑膜炎や骨髄の浮腫がなければ高い確率でリウマチでないと診断できます。

リウマチは膠原病です。

膠原病とは、ごく簡単に言いますと自分で自分を攻撃してしまう病気です。

人間にはウイルスや細菌などの外敵から身を守る仕組み(免疫機能といいます。)が、だれにでも備わっています。免疫機能が強ければ病気にかかりにくかったりするのです。

この免疫機能が、自分自身を外敵と勘違いして攻撃し始めるのが膠原病です。

攻撃対象がどこかによって症状が異なります。

主に動脈を攻撃するものが、結節性多発動脈炎

皮膚を攻撃するものが、強皮症や皮膚筋炎

といった具合で他にもいろいろな膠原病があります。

そして、関節を攻撃するものが関節リウマチです。

膠原病と呼ばれる理由は、病変が細胞同士をくっつけている膠原線維に見られることによります。

膠原線維は体中のいたるところにありますので、病態は大変複雑なものになります。

関節リウマチの症状

名前のとおり関節を中心に症状を生じますが、関節以外にも間質性肺炎、心膜炎、血管炎、骨粗鬆症など多臓器の疾患を合併することがあります。

小児で発症することもありますがますが多くは30歳から40歳で発症します。60歳以上で発症することもまれではありません。若い方のリウマチは女性の方が5-6倍男性より多いと言われますが、年配の方のリウマチ発症には男性も多くみられます。

初期は、指の動かしにくさを朝自覚する「朝のこわばり」から始まることがおおいです。

こわばりは日が昇るにつれて軽くなります。

リウマチの進行とともに指の関節が痛くなり腫れてきます。手首の関節の痛みや腫れも多くの方でみられます。さらに進行すると指や手の関節が変形し、腱の断裂を伴うこともあります。

手だけでなく手足のどの関節にもリウマチが及ぶ可能性がありますが、初期には比較的小さな関節から始まります。

顎の関節や頸椎の関節にも高頻度で見られ、特に頸椎の関節が障害されると重篤な問題を引き起こす場合があります。

一般にあちこちの関節が痛くなるのがリウマチという印象がありますが、たった一つの関節だけが痛くなるリウマチや、あちこち関節が痛くなるのにリウマチではない場合もあります。

関節リウマチのレントゲン

リウマチの方のレントゲン像を見ていただきます。

レントゲンでリウマチかどうかの判断がつくのは、軟骨や骨が溶け始めてからですので、すでにかなり進行した段階です。

レントゲンではわからないくらいの段階で受診していただくのが後の経過も良いと思います。

手と指の関節の隙間が狭く(矢印)なっています。

左肘です。関節の隙間が狭くなっています。

骨棘がなく関節の隙間が内側も外側も均等に狭くなるのがリウマチの特徴です。

左がリウマチの方の膝です。肘と同様関節の隙間全体が狭くなっています。

右は変形性膝関節症で関節の隙間は片側のみ狭くなっています。

写真左は足首の関節が糜爛(びらん)して見えなくなっています。

写真右は関節の隙間が保たれていて正常です。

 

足のゆびにもリウマチの変形はよく見られます。

 

関節リウマチの診断

関節リウマチの診断は、実は簡単ではありません。

関節が痛くなる疾患は数多く存在し診断が困難な場合もあります。

血液検査でリウマチ反応があったからといってリウマチとは限りませんし、明らかなリウマチなのにリウマチ反応が見られないこともあります。

医師により診断のばらつきが生じることをふせぐため、1987年米国リウマチ学会によって診断基準が作成されました。長い間この基準にのっとり診断が行われてきたのですが、発症間もない患者さんを診断することには問題もありました。

そこで2009年アメリカリウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会が共同で新基準を作成し、日本もこれを採用することになりました。

2010 ACR/EULAR 分類基準と言われます。以前の基準と異なる点は、血液検査結果を重視していることです。たとえばリウマチ反応が強く出現し、炎症反応に異常があれば、指の関節1か所の障害でもリウマチと診断可能です。

比較的早期のリウマチも診断可能となりましたが、それでもまだ不十分として最近では早期リウマチを診断する早期リウマチ診断基準も考えられています。

関節リウマチの診断基準(2010 ACR/EULAR 分類基準)

まず、下記の事項を確認

・一か所以上の関節に明確な臨床的滑膜炎がみられる。
・滑膜炎をより打倒に説明する他の疾患がみられない(SLE,乾癬、痛風などの除外)

次に、スコアリング(A~Dを合計) 合計6点以上でリウマチと診断

A

罹患関節

 
 

大関節1ヶ所

0

* 大関節:肩、肘、股、膝、足

 

大関節2~10ヶ所

1

 
 

小関節1~3ヶ所

2

* 小関節:PIP, MCP, 2-5MTP, wrist

 

小関節4~10ヶ所

3

 
 

11ヶ所以上(1ヶ所以上の小関節)

5

* ここに、顎・胸鎖・肩鎖関節を含めてよい

B

リウマチ反応

   
 

RF(-)かつ抗CCP抗体(-)

0

 
 

いづれかが低値陽性

2

 
 

いずれかが高値陽性

3

* 高値:正常上限の3倍を超えるもの

C

炎症反応

   
 

CRP正常かつESR正常

0

 
 

CRP、ESRのいずれかが異常

1

 

D

症状の持続

   
 

6週未満

0

 
 

6週以上

1

 

* 合計スコア 6点以上で、RAと分類してよい

この診断システムでは、以前よりリウマチの診断は漏れが少なくなりましたが、すべてのリウマチ患者さんが必ずしも早期に診断できるわけではありません。

関節リウマチの治療

2003年以降リウマチの治療は劇的な転換点(パラダイムシフト)を迎えました。

それまでの治療は、痛み止めや免疫抑制剤が主体でしたが、炎症の元を抑える生物学的製剤が開発されてから治療方法が一変したのです。

・ステップアップ方式の時代

今では懐かしい話になってしまいましたが、1970年代はリウマチの薬を次第に弱い薬から強い薬に段階的に使用してゆくステップアップ方式が正しいと思われていました。

1972年に提唱されたスミスのピラミッド治療方式はその典型でした。

しかし、薬を段階的に強くしてゆくには時間がかかり、その間にもリウマチはどんどん進行してゆきます。進行が速いリウマチの場合では、寝たきりになってしまう方もいらっしゃいました。

当時、どこの病院にも10年くらい入院したままベッド上生活をおくっている方が見られたものです。

・ステップダウン方式の時代

こうした事態を改善すべく1989年に発表されたステップダウン方式は、最初から強力な薬を含む多剤併用をおこない、様子を見ながら薬の種類を次第に減らしてゆくというものでした。

リウマチの関節変形は発症から2年でかなり進行してしまうため、あとから良い薬を使用しても変形してしまった関節はもとには戻りません。最初から良い薬を使用しましょうという方式は理にかなったものでした。

しかし、私の場合4種類くらいの薬剤を組み合わせることが多いのですが、実際にステップダウンができるかというと、薬を減らすと症状が悪化するため、ダウンできずにそのまま継続ということが現実でした。

もっとも副作用が多いステロイド剤をいかに減量して中止できるかが最大のポイントで、そのためにメトトレキサートなどの免疫抑制剤をじわじわ増量してゆくのがリウマチ医たちの基本方針でした。

この考え方は今でも同じです。しかし、これだけでは限界がありました。リスクをおかしてメトトレキサートを増やしても、ステロイド剤を減量できない方は多くみられましたし、ステロイドを増やしてもリウマチそのものの進行を止められるわけではないのです。

・生物学的製剤(バイオ製剤)の時代

2003年、最初に日本に導入されたレミケードは、こうした閉塞感を一気に打ち破ることになります。

その効果はまさに劇的でした。パラダイムシフトがおこった瞬間です。

おそらく日本中のリウマチ医は最初おそるおそる手を出したことと思います。

しかし、その効果の強さに使用例は急速に拡大しました。

バイオ製剤は、リウマチの炎症の元となるサイトカインという物質を抑える薬です。

元を抑えるため、リウマチの進行が止まり、他の薬剤を減量しやすくなります。場合によってはバイオ製剤そのものを中止できる「完全寛解」に至る方もいらっしゃいます。

良いことばかりではありません。

まずバイオ製剤は大変高価です。月の負担が8万円くらいになる場合があります。(負担割合や各種医療補助の有無によって異なります。)

また、だれにでも十分な効果があるわけではなく、全く効果が見られない方もいらっしゃいます。

たいへん高価な薬剤ですから使用する前に、効果があるのかないのか判定できると良いのですが、今のところそうした手段はありません。

さらに、バイオ製剤も副作用を生じる場合があります。

結核や肝炎など過去に患った病気が再燃する可能性や、肺炎、帯状疱疹、インフルエンザなど感染症にかかりやすくなります。

ひとたび感染症が起こると重症化する場合があります。

私は、リウマチの治療は「副作用との戦い」であると思います。

副作用をおそれて戦いに参加せずリウマチに敗れてゆくのか、リウマチに負けないように副作用との戦いに参加するのか、それは個人の自由ですが、副作用は早期に発見することで重症化が避けられます。主治医と相談を重ねながら治療を進めてゆくことになります。

この写真はリマチルによる爪が黄色く肥厚する副作用yellow nail syndrome です。

内服を中止して、回復するのに半年以上かかりました。

この胸部写真は、エンブレル使用開始後に罹患したマイコプラズマ肺炎です。

入院加療にて軽快しました。退院後再びバイオ製剤を使用しています。

他にもリウマチの治療中に、骨髄抑制、口内炎、間質性肺炎、帯状疱疹、肝機能障害、腎機能障害、化膿性脊椎炎など、当院で経験した副作用と思われる疾患は多数あります。

リウマチの治療をしなければ、こうした副作用には遭遇しなかったのかもしれません。

しかし、リウマチの治療が確実に成果を上げているのは事実です。治療手段も増えています。リウマチとの戦いに参加することで多くの方にとって明るい未来が見えてきているのではないかと信じています。